「一人交換日記」永田カビ
こんなに苦しいのは自分だけと感じる夜がある。
孤独の底に落ち、出口の無い暗闇に取り残されたような不安。
永田カビさんのコミックエッセイは、読んでいて擦り切れるような痛みを覚える。
「愛し愛されたい」という叫びは誰しもが普段心の奥底に押し殺していて、でもふとした瞬間に吹き出る血飛沫のようだ。
家族との確執も彼女の生き辛さの理由だ。というか、全ての大元は家族だから愛さないといけないと無自覚に刷り込まれた意識からきている。
家族でも愛さなくていい、攻撃されていると感じたら距離を置いて自分を守ればいい。
様々な葛藤を超えたカビさんはようやく一人暮らしを決心する。
そして、本を出版した彼女は読者の反応が知りたくてネットでエゴサを繰り返し、コメントに反応して消耗してしまう。以下、一番印象に残った箇所の引用だ。
こんなに、他人にどう思われてるとか気になることと、がんばっても自分で評価できないことは原因が同じだと思う。
なんというか、「自分のものさし」が無いのだ。
自分のものさしを持たない人は、自分のペースや自分のできることに応じた自分の成長に気付かず、評価しにくい。自己評価が低くなる。
自分のものさしが無い人はたいてい自分に生きてても許される価値があるのか不安で、でも自分のものさしが無くて測れないから、他人と自分を比べる。
他人と自分を比べたところで、目に見える大きさだけ比べても、目盛り幅は人によって違うから、意味ない。
(『一人交換日記』永田カビ著)
他人からどう見られるかを気にする余り、言動や行動をセーブしたり必要以上に誇張してしまう。私にも当て嵌まることだ。
カビさんは、ものさしは自己肯定感に近いと書いている。自分の頑張りを、いや、頑張って居なくても自分を認めてあげる。それが何より大切なのだと。
カビさんがこうやって言語化し、コミックエッセイにすることで救われる子供は多いのでは無いかと思う。セクシャリティーや親との関係で悩んでいる子供が、これを読んで少しでも自分の中にある気持ちを認められれば良いなと願う。